コラム・インタビュー

インタビュー

【コロナ禍での音楽活動③】
埼玉県立不動岡高等学校吹奏楽部
  指揮者 金子和明氏

 JTB演奏旅行デスクでは、コロナの影響を受けながらも音楽活動を継続・再開しようと日々努力している音楽団体の指導者に、【コロナ禍での音楽活動】をテーマにインタビューを行っています。

 第3回目の今回は、学校・保護者・会場の協力と理解のもと8月にお客様を入れた演奏会を開催し、成功させた埼玉県立不動岡高等学校吹奏楽部の顧問で指揮者を務める金子和明教諭にインタビューを行いました。

 不動岡高校吹奏楽部は国際交流も盛んで、東南アジアへの海外演奏旅行も実施。2021年3月もシンガポールへの遠征を予定してましたが、コロナウィルス感染拡大の影響で中止。しかし、日本での活動はいち早く観客を招いた演奏会を成功させ、金子氏自身のYouTubeチャンネルを開設し、インターネットで生徒たちの熱演の様子を配信するなど、コロナウィルスに負けない活動を行っています。

 今回のインタビューでは、そうした行動力の源泉や海外演奏旅行への想いなどを伺いました。

★★金子氏のYouTubeチャンネル【KanegonChannelカネゴン•チャンネル】★★

https://www.youtube.com/channel/UCmNPHaidcIqZvjwADtoCJEg

 不動岡高校吹奏楽部の演奏会や、過去の演奏旅行での公演などを公開中。

2019年マレーシア・イポーで日本・マレーシア合同バンドを指揮する金子氏

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-(JTB)不動岡高校吹奏楽部について、コロナ以前の主な活動について教えてください

 現在、部員は総勢約90名います。コロナウィルス感染拡大の影響を受ける前は、ゴールデンウィークに開催していた定期演奏会を中心に、夏のコンクール出場や地域の中学校での演奏、依頼演奏が主な活動でした。2017年と2019年には埼玉県代表としてコンクール西関東大会に出場しています。また、海外演奏旅行も重要なプロジェクトとして行っていました。

 私が不動岡高校吹奏楽部に着任してから、特に力を入れたのはコンクールでの成績向上と海外演奏旅行の実現でした。部活動と勉学の両立の観点から、効率の良い練習をテーマに、生徒自身が「自分で考えて、自分で練習を進められる」そうした指導をこころがけています。

 その成果が、いままで地区大会(県大会予選)でおわっていたコンクールを、県代表として西関東大会に進出できる実力へとつながったのだと思います。

埼玉県立不動岡高等学校吹奏楽部

 また、国際交流として海外演奏旅行を実現するための生徒たちへのマインドセットとしてまずは中国・ドイツ・台湾の学校バンドを受け入れ交流演奏会を開催するなど、国際理解を推進しました。

 国際交流を推進するきっかけは、私自身の経験が大きく影響しています。私もアマチュア吹奏楽団で演奏をしており、その団体で海外演奏旅行を幾度か経験しました。音楽を通じた国際交流は言語を超えた部分で、価値観の多様性・ダイバーシティを身をもって経験できます。こうした経験はほかの何物にも代えられない。こうしたかけがえのない経験を生徒にも若いうちに経験してほしいと強く思い、海外演奏旅行を部活動の大きなプロジェクトに位置付け取り組んでいます。

2019年シンガポールでのコンサート

-(JTB)コロナウィルスの感染拡大によって受けた、活動への影響を教えてください。

 2月終わりから部活動が停止となりました。部員は楽器を自宅に持ち帰り、各自限られた条件のもとで練習に取り組みましたが、自粛下においては非常に厳しい制限の中で練習もままならない状況でした。3月に行っていた3年生の引退式も中止、例年ゴールデンウィークに開催していた定期演奏会も延期となり、用意していた演奏会用のチラシやプログラムも全部作り直しとなりました。

 6月に入り、コーチの先生方のご自宅でパートごとのレッスンが再開するなど、少しずつ活動が再開し、6月下旬から部活動が再開しました。2021年3月にはと東南アジアへの海外演奏旅行を計画していましたが、残念ながら中止となりました。

 そのような中、延期となっていた定期演奏会の開催が8月に決まり、活動の目標ができました。定期演奏会は、ウィルス感染対策を徹底的に行うことを条件に、会場や保護者、学校の理解を得て、観客を入れて開催することとしました。保護者にとっては生徒たちの成長と活動を応援・実感する大切な機会。様々な意見がありましたが、入場者リストの作成、検温・アルコール除菌の徹底など、実施ガイドラインに沿って対策を徹底的に行い、演奏会開催にこぎつけました。また、当時リリースされていた楽器の飛沫拡散実験の結果なども参考にし、安全な演奏・鑑賞環境を確保しました。私のYou Tubeチャンネルでも演奏会を配信し、延べ14,000回の再生回数となりました。おかげさまで、演奏会は大成功。今後の吹奏楽演奏会の在り方に一つの指針を作り出すことができたと思っています。

2020年8月に開催された不動岡高校吹奏楽部定期演奏会。

 ウィズコロナでの活動においては、マスクの着用・手の消毒・体調が悪かったら無理はしないなど、基本的なことを励行するとともに、保護者の皆様ともLINEグループを作りタイムリーな情報提供・相談を行うことで協力体制を作っています。

-(JTB)アフターコロナに向けて、吹奏楽部の活動を継続していくために必要なこと・大切なことは何だと思われますか。

 100%安全、という保障のない中ではありますが、そうした中でも普段の練習や演奏会の再開など一つ一つ以前の活動に近づけ、実績を作っていくことの積み重ねが重要だと思います。生徒にとっては1年1年が戻ってこない大切な時期で、部活動のみならず体育祭や文化祭、修学旅行なども同じです。

「やればできたよね」という勇気と実感、実績をひとつひとつ積み重ねる。そうすれば世間もいろんなことにチャレンジしようという風土が醸成されていくではないかと思っています。そうした動きに率先して取り組んでくことが大切であると考えています。

今後については、11月と12月に自主公演を開催する予定で、練習に取り組んでいます。

不動岡高校吹奏楽部のメンバーと現地交流先の生徒で記念撮影

-(JTB)今後の海外演奏旅行に関するお考えをお聞かせください。

 海外演奏旅行は人生を変えるできごと。一回一回の出会いが奇跡だと思います。私自身が海外演奏旅行の参加者として得た経験は少なからず吹奏楽部の指導に生きていますし、参加したメンバーは国際交流を通じ人生の価値観や考え方が変わります。海外演奏旅行にはそうした力があります。演奏旅行に参加できるチャンスがあればそれを活かさない手はありません。

 「外からものを見た」経験は、自分たちはすごいものをやっているというアイデンティティ、やプライドを醸成し、国を超えた貢献の実感を得ることができます。

 不動岡高校吹奏楽部でも、海外演奏旅行を活動に取り入れてから、例えば卒業生は進む方向が変わりました。留学希望者増え、海外に行くハードルが下がり、グローバルな人財へと成長していく卒業生がどんどん出てきました。

 個人的には、今後、プレーヤーとしてはヨーロッパへ、吹奏楽部としては中国やアジアへ演奏旅行に行きたいと思っています。2021年3月のアジア演奏旅行は中止となりましたが、コロナウィルス感染拡大が落ち着いたら必ず開催します。

 演奏旅行の究極のテーマは「世界平和と共存」。音楽を通じて世界の仲間たちと個人的にこんなに仲良くなったら戦争なんてしなくなります。とてもわかりやすい国際経験です。

(インタビュアー:JTB演奏旅行デスク)